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[ 雑記帳 ] - [ カービングスキーは福音か? ]


最近はカービングスキーがあるじゃない?だからもう誰でもスキーが簡単に上手くなっちゃうんだよね。。それこそ昔はさ、懸命に練習して一つ一つターンの技術を覚えていったのに、今じゃいきなりパラレルだってできるんだもんね、そう考えると上昇志向とか闘争心とかなくなっちゃって、急につまらないものに思えちゃったんだよね。そう思わない?

かつてスキーを本格的に楽しんでいた人、それこそ毎週のように渋滞やスキー場の混雑にもめげずにスキーに足繁く通っていた人の中で、今やもうまったくやらなくなってしまった人──スノーボードに転向したわけでもなく、本当に雪山に全く行かなくなってしまった人の中からこういった発言が時々聞かれる。
「昔は一生懸命やっていた」という話もわかるし、練習して少しずつ技術を身に付けていった、という話も頷ける。

カービングターンのような考え方は、「カービングターン」という言葉や今の2本のレールのようなシュプールとはちょっと異なるが、「切れるターン」「キレのあるターン」などと言いながら、板をたわませてそのサイドカーブによってターンをする技術がそれこそ昔から存在していた。
それはもう上級者の特権的テクニックである。

ある頃、私も同じように切れるターンの練習をしていた。カービングターンという言葉が世に出始めたばかりの頃であり、カービングスキーと呼ばれるものはクナイスルのエルゴやエランのパラボリックぐらいだった。カービングスキーはまだファン的要素が強く、競技用やデモ用の板はまだまだ細身のスキー板だった時代である。
カービングスキーはどちらかというとカービングターンがどうのというふれこみよりは、誰でも簡単にターンができるというわりと初心者に向けた売り方の方が強かった。もちろんこの売り方はやがて、カービングターンも容易にできる、そんな売り文句も追加されていく。

ザウスのレッドコースで身体の倒し方を変えてみたり膝の返しを試してみたり。ふとした瞬間、カービングターンらしきものができた。いやそれはカービングとはもしかすると異なるものかもしれないし、ザウスの安定した雪質(人工雪のパックされた斜面はいい雪とは少なくとも言い難いが、常に同じ環境が提供される)のお蔭なのかもしれない。しかしそれまでのターンとは明らかに異なる質の、キレや走りを感じるターンができたのである。

それはそれは長い道程であったことは間違いないし、しかもそれ以降常にそのターンができるわけでもない。カービングターンはちょっと意識が散漫なだけでも上手くいかないし、体調がいまいちだったり、身体のキレが悪かったり、あるいは滑り過ぎて疲れてしまっているような時など、全くできない時も少なくなかった。

90年代も終わりの頃になると、競技やデモそして一般のスキー板にもカービングスキーのシェイプが浸透してきた。2000年を迎える頃になると、もうかつての細身のシェイプのスキーは全くと言っていいほどなくなってしまったのである。
カービングスキーはこれまで懸命に練習を積み、体得した人のみの特権であったカービングターンを、初・中級者が誰でも簡単に手にすることができる、それはそれは画期的な、そのふれこみは福音のようなものであった。
店に初級用の板を探しにいけば、今のスキーはすぐにターンを覚えることができる、と勧められ、中・上級モデルを見ているとカービングターンも自由自在と声を掛けられる。そんな時代になった。

お蔭で、ということばかりでもなかろうが、冒頭に書いたような発言を耳にしたりする。「俺はあんなに苦労したのに、今は苦労しなくてもいい、そんな時代だ」と。

やがて私もカービングスキーを手にする日がやってきた。
カービングスキーの初期の頃のモデルでトップが100mmに満たないものではあるが、それは心が弾んだものだった。体力、体調、意識、すべてがうまく揃わないと決まらないカービングターンがこれで日常的なものになる、と。一日に何度かしか決まらないターンが、これによって日常的なものになる、と。
私は待ちきれずに一ヵ月も経たないうちにザウスへ出向いた。ザウスでならその統一された環境下ゆえ、カービングターンもびしびし決まるだろうと思い滑り始めて、愕然とした。
今までと何ら変わった気がしないのである。
身体の入れ替え、膝や腰の使い方、あるいは体力やターンに入る時の意識、それらがきちんと揃えばスキーは切れ上がっていくしダメならズレズレのターンである。今までと何ら変わらないのだ。
つまり、私にとっては相変わらずカービングターンは難しいのである。
それからそのスキーを2〜3シーズン使っただろうか。スキーへの馴れを考えてもいまだに変わった気がしない。私の下手さゆえからかもしれないが、初級者から上級者まで、カービングスキーはあらゆるスキーヤーへの福音ではなかったのか。

私は今シーズンからトップが105mmの板を使う。一度ザウスで試してみた。切れ上がりや板の走りが確かにすごいと感じさせるが、それはターンが決まった時。このターンを決めるのは相変わらず難しい。私にとっては昔ながらの板を履いていた頃とカービングターンの難易度は全然変わっていないように思えるのだが、気のせいだろうか。

だからどうも私には、「今のスキーは簡単に……」云々の発言はまゆつばにしか聞こえないのだが……。

(03-DEC-2001 wrote)

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